それでもサッカーする僕ら

カール・コールマンさんいわく
マヤ暦によれば10月28日に人類が滅亡するらしい。
http://news.nicovideo.jp/watch/nw133597

明日なのは気のせいだろう。
この記事を書く前に僕のスタンスを
やっぱやめた。ちょっとサッカーしてくる。

僕らがくちびると名付けた彼女について

映画『LEON』を観た。
何回観ても素晴しいマチルダ。
--------------------------------------------------------------------------
 
 
そこは静かにジャズが流れる珈琲店のテラス。
僕らはゆったりと椅子に腰掛けて、煙草をくゆらせながら、穏やかに流れていく時間を楽しみつつ、鼻毛についての議論を交わしていた。

やがて美人なウェイトレスさんが近づいてきた。
僕らはそろって口を閉ざし、佇まいを正した。
テーブルに着いた彼女がそれぞれの珈琲を配りだす。アメリカン。シナモンメープル。ダブルナッツモカ。トレイからひとつずつ飲み物を机に置いていくただそれだけの、しかし指の先まで洗練された動作に僕は見惚れた。そして気付けば、テーブルには僕の知らない顔面が並んでいた。
紳士である。
つい数分前まで鼻毛がどうのこうの言っていたとは思えない顔ぶれ。みんなすごいぞ。普段からそうしろ。
そのような、ちょっと緊迫した空気が流れていた時だった。
不意に忠太郎が腕組みを解き、重々しくその口を開いた。
「ところで鼻毛は抜くべきかどうかだが」 
僕は。
いや僕だけではない。みんな硬直したはずだ。そして誰もが同じことを考えたであろう。くうき。くうきよめ。くうきをよめちゅうたろうプリーズリードザファッキンエア！　しかし僕は同時に賞賛もしていた。人は出来事を印象で記憶するという。よくぞ言ってくれた忠太郎。これで僕らは彼女に覚えられた。次から彼女に会うたびにこのように思われるはずである。
〝あ！　鼻毛の人たちや！〟



レオンさんこいつです！

 

エンジンをかける。

かつて通っていた高校に行ってきた。
 

 
二時だよ。
おっさん学校着いたよ。
さっそく文芸部の部誌を回収し、ラウンジで読む。
僕がいつも座っていたテーブルはやはりまだあの位置にあって、まあ向きだけ変わっていたけど消しゴムで擦った跡が残っていた。何を消したか思い出せない。部誌を読みながら、誰か知り合い居ないかなと顔を上げると、向かいの席のヤンキー女子に睨まれた。
おっさん学校来てすんません絡まないで。
 
文芸部の教室がまだ空いていない。
美術部へ行くとなんか同い年くらいの女子が居た。そして気付けば僕のスマホには彼女のアドレスが登録されていた不思議。コンニャクちゃんやかつての美術部長も今日来るとか聞いたから話しながら待っていると、教室の外が騒がしい。なんかキャーキャーゆってる。キムタクでも来たのかと思って出てみると、廊下はけいおん！部のメンバーでにぎわっていた。卒業したはずの人達だらけだ。
おいおい今日は何かのイベントでもあるのか。
そして小さくて可愛いのが手を振っている。
「義光さーん！」
「久しぶり（名前なんだっけ、まあいいや）グミあげる」
と差し出したその手を、グミの袋ごとそっと優しく包まれた。
うん。
えっ。
あの。
まあ。
うん。
「元気してましたあ？」
「元気です。これどうぞ」
「あはいありがとおおお」
とじたばた跳ねる。彼女は跳ねる。まるでチワワのようだ。どうするんだアイフル。どうしてやればいいんだアイフル。わっふるわっふる！　
それからけいおん部の自称恋愛コンサルタントが居たので話しかける。いったいこれは何のサバトですかと話を聞くと、これからけいおん！ミーティングをするらしい。義光さんも参加します？　
うん。僕が元けいおん部と思っているのか。
それともそんなの関係ねえってノリなのか。悩んだ末「美術部の教室から見てます」と丁重にお断る。そんな彼らはミーティングが始まった瞬間、シン…と静まり返ってた。
コンニャク娘と元部長は来なかった。二人とも元気にしてるだろうか。
 
最後に文芸部に寄る。
こっちも会議していた。机を円形にならべ、女女女男男というアンバランスな構成でぼそぼそと喋っている。何を話しているんだろう？　と気になって混じってみると、
「好きなものは」「嫌いなものは」「ご趣味は」
・
・
・
原付にまたがった。
次の部誌は3月くらいに出すようだ。彼らがどうしてお見合いしてたのかは分からないが、まあ文芸部はこれからがスタートなのだろう。暇だったらそのときにまた来よう。スロットルを回すときゅきゅきゅるきゅきゅると甲高い音が駐輪場に響いた。
最近、なかなかエンジンが掛からないな。

Close

この装備は呪われていて外すことができません。

 
冷蔵庫を開けると、鯖が置いてあった。
丁寧にラップに巻かれ、野菜や肉その他を押しのけ堂々と中央を陣取っている。その姿はまるで「は、早く食べないと腐ってやるんだからね！」と言わんばかりだった。

 

 
ごはん無しで食べてやった。
もしかして腐ってる？疑問は解けなかったが、甘くておいしかった。たぶん腐ってた。骨も綺麗に抜かれてあって柔らかく、ほとんど噛まずに食べてしまった。そして腐っていた。
僕のお腹は鯖で満たされた。イェスマイベリーワズフェウドバイファッキンマッカレイ！
さて小説でも書くかなと外に出て煙草を燻らせていた。
すると何やら口の中に違和感があるじゃないか。口を開けるとやっぱり、ノドの奥で、チクッと針で刺したような痛みがする。オイオイと思った。
鯖の骨がノドに刺さったようだ。
 
とれん。
 
指の根元まで口の中に突っ込むと、微かに指先が鯖の骨に触れる。あっ居るねという感覚。もう寂しくないね。でも邪魔ですよそこは。取ろうとしたが何度も吐きそうになった。吐くのってこんなに辛いんだ。最近なかなか吐くチャンスがなかったからより辛い。〝諦めたらそこで……〟安西先生の姿が脳裏をよぎる。
諦めた。
もうやめようこんな事は。吐き気で涙目になりながら僕は悟る。こういう神聖かまってちゃんは放っておいたら勝手にどっか行くのだ。コーラでも飲んでたらいつか溶けてなくなるだろう魚の骨だし。その日までこの痛みは我慢すべきなのだ。あと次から魚はよく噛んで食べるべきなのだと、僕は悟った。
これが９月３日の出来事である。
あれからもう一週間が経つんだよな。


ちょっと耳鼻科行ってくる。

Close

モップの少年

「雨だね」

おととい僕らはマクドに居た。気が付けば、いつの間にかそこに居た。
「どうしてだ？」
そもそも僕らは、どうして集まっているのだ。弐寺と忠太郎と僕は、互いに顔を合わせた。しかし誰もその理由が説明できなかった。何ひとつ分からなかったが、せっかくなのでみんなでビッグマックセットを食べた。

うまい。
うま　イ。

　　　う　ま　　

ポテトを頬張っていると「そういえば」と忠太郎が切り出した。おもむろにカバンから本を取り出したかと思えば、そこにはでかでかと『写真の撮り方』的なタイトルが踊っていた。
義「写真？　……カメラ？」
忠太郎と弐寺がうなずく。そういえばこの二人は昔から結構写真撮ってたなと思い出しながらも、少し興味がわいたのでちょっと読んでみた。おお、どのページにも写真の撮り方が書いてある。
忠「義光もどう？」
義「いや俺はいいや」
 
お腹がふくれると煙草が吸いたくなってくる。僕と忠太郎はテーブルを弐寺に任せて外へ出た。ひんやりと冷気立ちこもる夜中、煙草に火を灯す。
義「写真ねえ……」
忠「義光もどう？」
義「いや俺はいいや」
特に話すことも無く、しばらく似たような会話をループさせていた。
すると店内から１８、１９くらいの背の低い少年が扉を開けて、僕と目が合った。金髪に近い茶髪をモップみたいに伸ばしたヤンキーだ。若いくせして死んだ目をしている。
ヤ「……あ」
何か忘れ物をしたのか、そいつは店内へと戻っていった。
顔を合わせる僕と忠太郎。
義「……写真ねえ」
忠「義光もどう？」
義「いや俺は」
モップの少年はすぐに戻ってくる。今度は目を合わせないようにしていたが、少年は僕に話しかけてきた。
ヤ「すんません、一本くれません？」
忠「……」
義「どうぞ」
僕の煙草を受け取ると、少年は静かに火を灯して会釈した。それから小さなビニール傘を差して、ユラユラと独特の歩き方で雨の中に消えていった。僕はその後ろ姿を眺めながら、たとえば意味もなく少年の最近あった出来事とか聞いとけばよかったな～なんて考えていた。
 
 
 
 

Close