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Dodoria.blogはクリエイター職を目指す義光、忠太郎、与助の3人が 互いを切磋琢磨しながら実力向上を図り、仕上がった作品を記録として残すために設けられたブログである。
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今年は就職難で、自己留年される方もたくさんいらっしゃいました…

友達も割に留年する奴らが多かった。。

そんな本人達からしてみれば、不要とも思える気遣いのような重く漂う暗雲のような
「卒業パーティにあいつを誘うかどうか」「素直に喜んで良いのかどうか」
とか、悩んだ人も多くいたようで

今年の卒業式は例年に比べ、どこか影のある式典になった。

どこの大学もそうなのだろうか…。
桜の花びらは新たな門出を祝ってはくれるが、清々しい旅立ちはやはり当人達の自己責任の範疇にあるらしい。

なんとも世知辛い世の中になってしまった。

だが、旅立ちが味気なくとも、大学で過ごした四年間はなかなかに味のある、充実した?否、爆発した日々だったし、何よりそれが自分の宝物のようにきらきらした思い出になっていることも確かだ。

四年間、毎日のようにカラオケに通い詰め、のどを枯らし、潤いを求めて酒をあおり、吐瀉物を道路の脇に吐き捨てながら、我が校の校歌を酔いつぶれた人々で賑わう深夜の商店街を肩を組み合って思い切り叫んだあの最低に劣悪で最高にファンキーだったあの黄金時代。

何にしても式典が終わり、飲みに入ったカラオケで熱唱しながら、みんなで大学時代を過ごせて良かったと心からそう思った。
しかも打ち上げパーティでは留年した奴も駆けつけてきてくれて、乾杯の音頭は
「俺達の黄金時代に、乾杯」

ジョッキやグラスを打ち付けあって、笑ったw

 


さてさて、ここからはある親友との物語。
オチもなし、起承転結もぐだぐだにただありのままに流れに任せて書いてみようと思う。

とにかく、酒癖が悪くて、飲んでなくてもお調子者で(奴に金を貸すのなら、1年は我慢しなければならなかった)、だけれど割と人から好かれてしまうそんな奴だった。
そして、無類の映画好きだった。フランス映画をこよなく愛し、時間と空間の絡み合う美によって表現される芸術とでも言えばいいのだろうか、とにかく奴は気に入った映画の仕種を覚えるたびに、何も意図していないのを装って、タバコを吸いながら、あるいは酒を飲みながらそれを披露してしまうようなある意味、可愛らしい奴だった。
そして全く勉強が駄目だった。
留年のきっかけは複選の外国語(当然~語)で、単位も世話してやらないとろくにも取れないそんなほっとけない奴でもあった。

奴と毎日、ぐでんぐでんにひっくり返るまで町中を練り歩いたこともあった。
何度、救急車が立ち寄ったことだろう。
何度、グラスを割っては立ち入り禁止をくらったことだろう。
何度、女に声を掛けては慰め合ったものだろう。
何度、いやもういい。本当にそのくらい奴も含め、俺達は駄目だった。
そして、何か駄目なことをやらかすたびに、駄目と知りつつも馬鹿笑いが止まらず新たな「駄目」を発生し続けたのだ。全く、近頃の若いもんは何て馴染みの説教が心に染みるw

そんなある日のことだった。
奴は心なしか、走って僕がよけた先の垣根に頭を突っ込んでまで、笑顔になりながら、
こんなことを言ってきた。

「俺な、忠太、サイドビジネス始めようと思うねん」

奴はそしていきなり前上口もなしに、ねずみ講についてもの凄い勢いで弁じ始めたのだ。
元々、何かに突っ走ってはぶつかって、転んではまた何かにぶつかるような奴だったから
まぁ、ともかく、これはまずいと、止めないとちょっと冗談ではすまねえんじゃねぇの、
といつもならば受け流して実験台にしてやるところだが、その時だけは
皮肉やの僕のつめたぁい心にもほんの僅かな「思いやり」というああ、そうさ「思いやり」なんて主観的だけどね、まぁ思ったことは言い合える仲なので
「僕の主張」を聞いていただくことにした。

「やめとけ、ろくなことにならん。いいか、そういうのは最初に作ったメンバーだけが成功するもんでだな、お前遅いって。止めとけ止めとけ。ほれ、色んな人がネットで叩いてるだろ。まだ法で規制されてないんだから…(以下省略)」

という具合に長々とお気に入りのカフェオレもさめてしまうまで、
奴の目がしょぼしょぼになって、危うくかっくんかっくん、地面に突っ伏しそうになるまで、
僕は思うところをぶちまけて、これでもやるならまぁ、仕方ねぇやとかさめた目線をまた皮肉ってみながら、無機質なファンの音のするパソコン室で話してやった。

まぁ、長々とした説教も効をなしえたのか、
わかってくれたらしく、しょぼしょぼの目をこすって、映画仕立てのあくびまで披露してくれやがって!

「わかった、俺それ止めた方がいいような気がしてきた。お前にまた長々と説教されんのも嫌だし」
「俺もお前に二度とこんな説教する気になれねぇよ、ぼけ」

頭をこずいて、立ち上がって部屋を出ようとしたところで

「忠太」
「んん?」
「Thank you. ピエール. You smoke my smoke.」(あなたが私のタバコを吸いました)
「映画、見過ぎじゃ」

意味のわからない、決めぜりふを吐いてそのまま椅子に寄りかかって寝てしまった奴を尻目に
その日、僕は次の授業へと向かった。心なしか、ちょっとした安堵感が胸に漂ったのを今も覚えている。

だけど、事件はそれで幕を閉じなかった。
いや、無理矢理の横やりの介入によって、閉じれなかったのだ。

そう、奴には彼女がいたのだ。二年も付き合ってきた彼女がいたのだ。
そして事の真相に最後まで気付かなかった僕を今でも責め立ててやりたくなる。

その2週間後、奴はサイドビジネス、つまり先ほどのねずみ講に手を染めたのだ。
奴はみるみるうちに痩せこけた。
打ち明けてきたのも割に早い時期ではあったし、まぁまた長々とした話もしてやったが、
何度話そうとも、辞める気配もなかった。
みるみるうちに痩せこけた奴はみるみるうちに、金を使い果たし、みるみるうちに

友を失っていった。

勿論、俺達のグループは誰も奴のことを見限ったり、諦めたり、ましてや捨てたりはしなかった。

だけれど、そんなアンバランスな二足のワラジがいつまでも続く訳が無く(もちろん成功する人は成功するのだろうが、格別、奴は不器用でもあったのだ)

単位も取れず、ある日、留年が決まったと、電話越しに映画のワンシーンを解説するかのような棒読みでそう告げてきた。勿論、恩を着せるつもりは毛頭無いが、これでも勉強でサポートできる面は微力ながら支えきたつもりだったので、驚いたし、ショックでもあった。
まぁ留年する奴は周りにもその時から何人かいたので、俺達は例外なく、奴を笑いの種にして、奴の不幸を馬鹿笑いで吹き飛ばすかの如く、毎日遊びに付き合った。

だが、誰もサイドビジネスの話を持ち出そうとはしなかった。

勧誘される…そんな恐怖もあったし、宗教的に押しつけてくる奴の態度の豹変ぶりも怖かったのかもしれない。だが、本題は別にあった。奴の心の傷に塩を塗りたくない。
そして、その傷は癒そうとしようとも、あまりにも深く、反対に奴を苦しめてしまうのであろうことを皆、わかっていたこともあるのかもしれない。

僕の一回目の説教で手を出さないことを決意したその日、奴の彼女は奴にこう言ったらしい。
「だったら別れる」
彼女はとっくの昔に、サイドビジネスにはまり込んでしまっていたのだ。
そして、とっくりうたた寝しながら、俺の話を聞いていた奴は反論する余地も見いだせずそのまま、流れるようにして、どっぷりと恋人同士ではまってしまったのだ。

まだ話は続く。

彼女はしばらく期間を空けて、こういったのだ。
「パートナーとしてやっていけない、私たち別れましょう」

そう、恋愛のパートナーとしてもはや、見ていなかったし、もはや仕事のパートナーとしてしか奴を彼女は見ていなかったらしい。

そして、もはや彼女の有無でビジネスから手を引くことも出来ない程、企業の宗教じみた価値観にとらわれてしまった奴は止める術を、理由をどこにも見いだせなくなってしまったのだ。

そして今でも奴はビジネスを続けている。

もっとあんなふざけた奴でもしっかり見ていたら、
そんな言い訳は勿論通らないし、きれい事である。
結果はこの様である。
僕は結局何もできなかったのである。
それどこkろか、一人で孤軍奮闘、ドラマティックに物事を見つめ、ストーリーの主人公になったつもりで
上っ面だけの正義感を振りかざしていたようにも今なら思える。

卒業式のその日、奴は顔を出しにやってきてくれた。

今年は卒業はかなわなかったが、今年の秋にはきっと単位を全部修得できるらしいが、
そうじゃなくて、僕はお前の一生そのビジネスでやっていくつもりなのかどうか
そっちの方が心配だよ。

不安そうに見つめた矢先、久しぶりにみた奴の笑顔、
痩せこけて、目の下に隈でも作って、なんだ、そのお調子者らしい笑顔は。

卒業しても奴とは連絡を取りたいと思う。
今度は、ちゃんと向き合って話がしたい、
本当にそう思った。

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