Dodoria.blogはクリエイター職を目指す義光、忠太郎、与助の3人が
互いを切磋琢磨しながら実力向上を図り、仕上がった作品を記録として残すために設けられたブログである。
category:忠太郎
秋が過ぎ、冬の季節になって、俺達は付き合うこととなった。歳の離れたカップル。相手はまだ三十路にさしかかった頃で、2度結婚し、2度離婚している。それを聞かされた時はさすがに驚いたが、無理もないことだろうと居直ることにした。
なにしろ相手は美人である。皺という難題を知らない童顔と呼べる顔つきで、彼女の亜麻色の髪は仄かな甘い香りがする。そんな女が何故、俺と付き合うことにしたのか。よく理解ができないが、彼女の言うところによれば
「中身がいいの。料理だってそうでしょう。見てくれだけのフルコースにはもう飽きちゃったのよ」
ということらしい。
彼女と出会ったのはある真夏の昼下がりの会社の屋上だった。いつものように缶コーヒーを口に含んで溜息をついていると、藍色のハンカチが飛んできた。拾い上げると後ろから彼女がすみませんと言って近づいてきたのだ。
俺はすぐに彼女が誰かわかった。会計課の加藤さんですよね。と声を掛けると驚いたように彼女のくりくりした目は一層見開かれた。何でわかったんです?会社の人間の名前は一応全部覚えているから。そう答えると彼女は俺に興味を抱いたらしく、そのまま話し込み、デートの約束をして、とんとん拍子に話は進み今に至るという訳である。同じ会社なので時間の都合も付きやすいという利点も働いたのかもしれないが。
今日はその彼女とイタリアンに入った後、夜、初めて家に招いた。ベッドのスタンドの明かりを灯すと、彼女の裸体が暗闇の中にぽっかりと浮かんだ。これだ。暗闇の中の一筋の光。彼女がまさにそうだ。
「寒いわ。ねぇ、私の体変じゃない?」
「そんなことはない。綺麗だ」
こんなありきたりの会話も彼女となら特別な響きを持って俺の心を潤してくれる。滴り落ちる。しずくが。心のしずくを感じる。海のようだ。海のように溢れんばかりの愛を今俺は肌身で感じているのだ。彼女の吸い込まれそうな大きな黒目が俺を覗きこんだ。少しだけ不安を感じた。何に?こんなもの愛の営みの、一時の引き潮であろう。だが潮の引きは収まらない。段々と乾いてゆく。何が?愛が。不安は徐々に募り、恐怖の芽が。今更に愛に恐怖を覚えるのか。40歳にもなる俺が?馬鹿な。
「待ってくれ。ちょっと待ってくれよ」
俺はやんわりと彼女を押しのけようとした。だが、強情な彼女は離したくないのか前より一層力をこめて、抱きついてきた。前よりも一層、彼女の大きな瞳を近くに捉えた。
「ああ!」
気付いてしまった。そこには、彼女の大きな黒目には、「奴」が映し出されていた。彼女の目に映るのは俺ではなく「奴」だった。奴は俺から何もかも奪い取るつもりだったのだ。気がつくと、彼女は裸のまま、床に横たわり、うめいていた。知らぬまに突き飛ばしたのか?俺が?いや、奴だ。急いで駆け寄ると、右頬に痛みを感じた。彼女の平手打ち。潤んだ瞳。
「あなたって、最低ね」
右頬の痛みが消えなかった。彼女の濡れた瞳に歪んだ奴の顔が一層歪んで映った。彼女は服を着ると、コートを羽織り、さよならと一言だけ呟いて部屋から去っていった。残された俺は右頬のまだ消えない熱を冷ますために、洗面所へと向かった。水で顔をゆすぎ、顔を上げるとそこにはやはり奴の顔があった。顔を歪ませて奴は笑った。
「ほらな、化けの皮がはがれたろ?」
なにしろ相手は美人である。皺という難題を知らない童顔と呼べる顔つきで、彼女の亜麻色の髪は仄かな甘い香りがする。そんな女が何故、俺と付き合うことにしたのか。よく理解ができないが、彼女の言うところによれば
「中身がいいの。料理だってそうでしょう。見てくれだけのフルコースにはもう飽きちゃったのよ」
ということらしい。
彼女と出会ったのはある真夏の昼下がりの会社の屋上だった。いつものように缶コーヒーを口に含んで溜息をついていると、藍色のハンカチが飛んできた。拾い上げると後ろから彼女がすみませんと言って近づいてきたのだ。
俺はすぐに彼女が誰かわかった。会計課の加藤さんですよね。と声を掛けると驚いたように彼女のくりくりした目は一層見開かれた。何でわかったんです?会社の人間の名前は一応全部覚えているから。そう答えると彼女は俺に興味を抱いたらしく、そのまま話し込み、デートの約束をして、とんとん拍子に話は進み今に至るという訳である。同じ会社なので時間の都合も付きやすいという利点も働いたのかもしれないが。
今日はその彼女とイタリアンに入った後、夜、初めて家に招いた。ベッドのスタンドの明かりを灯すと、彼女の裸体が暗闇の中にぽっかりと浮かんだ。これだ。暗闇の中の一筋の光。彼女がまさにそうだ。
「寒いわ。ねぇ、私の体変じゃない?」
「そんなことはない。綺麗だ」
こんなありきたりの会話も彼女となら特別な響きを持って俺の心を潤してくれる。滴り落ちる。しずくが。心のしずくを感じる。海のようだ。海のように溢れんばかりの愛を今俺は肌身で感じているのだ。彼女の吸い込まれそうな大きな黒目が俺を覗きこんだ。少しだけ不安を感じた。何に?こんなもの愛の営みの、一時の引き潮であろう。だが潮の引きは収まらない。段々と乾いてゆく。何が?愛が。不安は徐々に募り、恐怖の芽が。今更に愛に恐怖を覚えるのか。40歳にもなる俺が?馬鹿な。
「待ってくれ。ちょっと待ってくれよ」
俺はやんわりと彼女を押しのけようとした。だが、強情な彼女は離したくないのか前より一層力をこめて、抱きついてきた。前よりも一層、彼女の大きな瞳を近くに捉えた。
「ああ!」
気付いてしまった。そこには、彼女の大きな黒目には、「奴」が映し出されていた。彼女の目に映るのは俺ではなく「奴」だった。奴は俺から何もかも奪い取るつもりだったのだ。気がつくと、彼女は裸のまま、床に横たわり、うめいていた。知らぬまに突き飛ばしたのか?俺が?いや、奴だ。急いで駆け寄ると、右頬に痛みを感じた。彼女の平手打ち。潤んだ瞳。
「あなたって、最低ね」
右頬の痛みが消えなかった。彼女の濡れた瞳に歪んだ奴の顔が一層歪んで映った。彼女は服を着ると、コートを羽織り、さよならと一言だけ呟いて部屋から去っていった。残された俺は右頬のまだ消えない熱を冷ますために、洗面所へと向かった。水で顔をゆすぎ、顔を上げるとそこにはやはり奴の顔があった。顔を歪ませて奴は笑った。
「ほらな、化けの皮がはがれたろ?」
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