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Dodoria.blogはクリエイター職を目指す義光、忠太郎、与助の3人が 互いを切磋琢磨しながら実力向上を図り、仕上がった作品を記録として残すために設けられたブログである。
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「黙れ」

俺は鏡に目一杯近づいて、奴を睨み付けた。

「のぞき込んでみろよ。俺の左目」

そこにも奴はいた。奴は2人いる。

「違うだろ」

そうだ、違う。これは奴と通じ合っている俺には奴の形相を模写したような心の様相が見えて。

「認めろよ」

そうだ、これは。

「俺だ」

鏡の俺が呟いた。恐怖で顔面が蒼白になっている。足がふらついて、膝が床についた。彼女は無事家路につけただろうか。ひどいことをしてしまった。今更に自責の念が胸に募る。もう逃げ道はなくなった。
今までせっかくだまし続けてきたというのに。立ち上がり、服を着替えセーターを上着に、ダウンに腕を通した。追いかけてみるか。ドラマみたい に?いや、彼女の住むアパートなら一度見かけたことがある。外は静かで、街灯がぽつぽつと道に灯りを投げかけていた。まぁるい月が冷たい夜空を飾ってい る。

彼女のアパートのポストで部屋番号を確認すると、急いでオートロックの番号を押した。インターホンが鳴ったが、しばらく経っても誰もでなかった。おそらく番号の上の黒い四角で誰が来たか確認できるのだろう。もう一度、押した。これで出なければ諦めるつもりだったが、

「何よ?」

辛辣な短い言葉が胸に矢のように刺さった。

「話があるんだ。聞いてくれないか」

「こっちには話す事なんて何もないけど」

「なら聞いてくれるだけでいい。会わなくていいから」

彼女は答えないが、受話器を切らないので、俺は話し続けた。

「俺の顔が見えるか?この顔のせいで、どうしても俺は自分のことを認めることができなかったんだ。でも君のおかげで、君の目が認めた俺を見つけて、俺は自分のことをもう一度認めてみようと思えたんだ。頼む、もう一度、考えてみてはくれないか」

沈黙が重々しく2人の間に漂っているように思えた。彼女は何も言わないが、受話器も切らない。恐くて仕方がなかったが、じっと待つことにした。何分待ったか、あるいは何十分待ったか、ポーンと音がして、静かにドアがスライドした。

「そこは寒いでしょ。コーヒー入れてあげる」

彼女の言葉が暖かく、胸にしみた。怪物だと思い続けてきた俺の姿、今になって初めて怪物の中を覗き込むことができた。そこには本当の自分がい る。まだ見たこともなかったけれど、案外、正直な奴だった。感情的にもなりやすいけれど。彼女の中は、果たしてどうなってるんだろう。暖房の効いたエレ ベータの中で階数と共に、静かに胸が高鳴ってゆくのを感じた。
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