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Dodoria.blogはクリエイター職を目指す義光、忠太郎、与助の3人が 互いを切磋琢磨しながら実力向上を図り、仕上がった作品を記録として残すために設けられたブログである。
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 夜になると、俺はいつもの鏡の前に立った。そして決まって、そこには右上の瞼がふくれあがり、左の鼻孔がつぶれ、上唇がめくれあがった、つぶれた40過ぎの奴の顔が映る。夏の夜の生暖かい風が小窓の隙間を縫って奴の頭頂にまばらに生えた白髪を揺らした。

「このでくのぼうめ。今日も現れたか」

俺がそう言うと、奴は右の拇指で顔をなぞり始めた。

「俺はお前みたいな奴が大嫌いだよ。昼間の奴らが言っていたけれど、あれは全部お前のことなんだ。「気持ち悪い奴」って聞こえるようにひそめいていたのはあれは全部お前のことなんだ。」

今度は奴を指差して、息をはずませ、そう吐き捨ててやった。鏡の奴は全身を震わせ、つぶれた上唇を歪ませて笑った。

「はは、笑えるね。それがあなたのルーティンプレイだものな。そうやって自分に嘘をつかないとあなたの心は潰れてしまうのだもの」

奴はこともなげにそう言ってみせた。オブラートの効いたその口調に余裕を感じる。忌々しい。

「黙れ、出来損ないめ。1970年のあの冬の日の夜にお前は火事場から煌々と現れた。それからだ。全く鏡の前に立つのが億劫になったよ」

「出来損ないはあなただろう。そんなだから、いつまで経っても同じ所をぐるぐる回り続けているのさ。私にはそう見えるがね」

「いいや、そんなことはないさ。これを見ろ」

俺はジャケットの裏側から写真を一枚抜き取って、鏡に突きつけて見せた。

「誰だい?その女は?美人じゃないか」

「こいつが俺に言い寄って来ているのさ。お前には到底できない芸当だろう」

「すぐに化けの皮がはがれるさ。お前は俺で、俺はお前なのだから」

そう言うと、鏡の男は後ろを向いて去っていった。忌々しい。奴の一挙手一投足が俺のはらわたを煮えくり返す。全くもって忌々しい限りである。洗面所の灯りを消すと、家は暗闇に包まれた。暗闇の中で俺は一筋の光を見いだしたのだ。ベッドを手探りで探すとゆっくりと心地の良い闇が全身を包み込んでいった。
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