ナイス！

忠太郎君の書きたい「テーマ」ってあるの

…あるよ

何？

そういわれてみれば、これが書きたいというテーマは今までなかったのかもしれない。
今までは面白そうなテーマを見つけて書いてきたけれども
それが本当に伝えたかったことなのかと言われれば
嘘になる。

ギターボーイ、Ｍ君に言われて気がついたのだ。
Ｍ君はぺらぺらの豚肉を盛大にご飯に乗っけて食べていた。

ああ、たれをつけたらおいしいだろうに。

何も掛けずうまいうまいという彼には
動物的本能でも備わっているんじゃないかと。

家に帰って彼の言葉を思い返してはみたものの
伝えれることではなく伝えたいことを見つけるには
もう少し時間が掛かりそうだと思った。

帰り道は真っ暗な公園を通った。
ざわざわと竹がしなって
おばけでも出てくるんじゃないかと。
出てきてくれたらどれだけ
書くのが楽だったことか。いくらのぞき込んでみても
真っ暗な空間が広がっているだけだった。

小説載せました
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木の側にベンチがあった。夕暮れ時の今は一人のスーツを着た男と老婆が腰掛けていた。男は仕事を早めに切り上げて、帰路の途中、一服しようとベンチに腰掛けたのだ。一方の老婆は夕暮れ時になると毎日ここに現れた。ぼんやりと流れる雲の行方を追ってみたり、近くの河原で遊ぶ子供達の声に済ましてみたりして毎日を楽しんだ。

「なぁ」

口を開いたのは男だった。

「あんた、いつもここに来るのか」

帰り道なのでたびたび老婆を眼にしていた男は気になっていた。どうして、なんのために来るのか男にはおおよそも理解できなかった。

「そうだよ、ここの景色が好きでね」

周りを見渡してみたが、興味をそそられるようなことは特に何もなかった。男は足下へと眼を向けた。一匹の蟻が老婆の履く下駄の辺りをぐるぐる回っている。老婆は蟻をそっとつまむと自分の手の甲に乗せてやった。男は繭をしかめて手の甲でやはりぐるぐる回り続けている蟻を見つめた。どこに行っても肌色の大地に困惑しているように見えた。

蟻は左手の甲から人差し指の先まで滑るように降りてゆき、爪の先から反対側の手の平へと、それから小指の付け根のあたりの角張った骨を登ってまたしわだらけの皮膚に足を滑らせてしわに足をすくわれながら、ころころと老婆の左手の上を転がった。

「そんなことして、何か面白いのか」

老婆はじっと蟻を見つめて何が面白いのかほほえんでいる。そうしてしばらくしてから蟻をさっきのように摘んでゆっくりと地面へと降ろしてやった。蟻はまたせっせと動き始め、老婆の足下で木の根もとの巣へと帰っていった。

「考えてみたことあるかい」

急に老婆に声をかけられて、男は吸っていた煙草を地面に落とした。

「なんだよ」

地面に落ちた煙草を踏み消した。その様子を隣の老婆はじっと見つめた。

「蟻の気持ちさ。考えてみたことあるかい。普段からずっと地面を這って歩き回るんだ。６つの足をこうざわざわ動かしてね」

そう言うと女は男に向かって両手の指を曲げたり、伸ばしたりした。

「たまには高い所で冒険してみたいもんさ。さっきなんて嬉しそうに駆け回っていたじゃないか。それをなんだい。楽しいか、だって？　何様のつもりかね。しらけたこと言ってんじゃないよ。」

老婆は男を一喝して、すくっと立ち上がって杖を担いでさっさと公園を去ってしまった。残された男は足元に這ってきた蟻をつまみ上げて、手の甲に乗せた。

「いたっ」

両手をばたばたと振って男は足早に逃げるようにしてその場を去ってしまった。

乾いた土の上に放り出された蟻は何ともなかったかのように木の根もとの巣へと帰っていった。