脱兎

さぁて始りました大学院生活、かなり舐めてました。すいません。
まったく学者のすし詰めであり、今年２３にもかかわらずあまつさえ青春という名の甘い蜜を心待ちにしていた私忠太郎であったが頭に日々数字と理論との灰色の戦いを広げ、一人暮らしはティッシュの山と化し、勉学を全うせんとするちょいと顔を覗かせた可愛らしいエロと固定観念の塊に変わり果てようとしていた。

とりあえずここで私は宣言したい！

そうにも関わらず小説を書き続けていたと！

入学して一ヶ月し、ある夢、大望に轟々と燃えていたつもりの小さな蝋燭のともし火は消えかかりそうになったのを察知したのはある昼下がり、ややロマンティックな教授の夢見心地な瞳で、あなたは絶対的な学者の血を有している！私の元に来なさい！と宣告された瞬間だった。とりあえず昼飯だけ奢られて、逃げるようにして帰った。ちがう、ちがうちがうちがうちっがう！
というわけで脱兎の如く、喫茶店に飛び込み、その日を境に小説を書き続けた。
ミスタードーナッツの店員さんもびっくりである。消しくずとお水で湿り、薄汚れた机を前に何を思ったことか。
山田村、あの悪夢の二の舞にはなるまい。
マクドナルドを追い出された男汁会のあの寒くつめたい現実に幾度となく痛めつけられた心がどれだけ震えたことか。

とにかくドーナッツを貪り、コーヒーを爆音をたててすすり、
原稿用紙に涎を撒き散らす毎日を
送っている忠太郎でごわす。

もうすぐ一作完成します。

それでわ。