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Dodoria.blogはクリエイター職を目指す義光、忠太郎、与助の3人が 互いを切磋琢磨しながら実力向上を図り、仕上がった作品を記録として残すために設けられたブログである。
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前世の話
まず私が生まれる前の話をするに当たって、母の胎内にいた頃によく浸った前世の日々を思い返さなければならない。私は人として生まれる前、一匹のハエであった。そして毎晩毎晩、空き瓶の内側にこびりついた酒の汁を飲んだくれていたのだった。明け方になるとそこらのほこりのベッドに寝付いて、晩になれば、家々に灯る明かりを巡り、飲みまわる毎日であった。そうしている内に機微であった動きは鈍り、羽も以前よりずっしりと重くなってきた。そんなある日の蒸し暑い晩のこと、六軒目のかび臭い本に埋もれた家へ小窓の隙間からお邪魔した時のこと、私は書棚の間にある机の角にある酒の空き瓶を見つけた。しめた、まだ飲んだばかりだ。今にして思えば、それが間違いだった。勢いよく瓶めがけて飛び込んだのだったが、汁を吸ってほどなくして律儀なのか家主であるその青年は蓋を閉めてしまったのだった。まずい!と思ったが最期、出られなかった。結末を言えば、死ぬまでの間、私はその空き瓶の中で過ごしたことになる。緑色に濁った世界を何日も眺め続けた。ひたすらその青年は机にかじりついて本を片手に熱心に勉強しているようだった。出せ!俺を嵌めたのだな!ここから出せ!初めこそ恨んでいたが、そんな一匹の蝿のことなぞ人間が気付く訳もないと諦め始めた数日の内、私の中で大きな変化があった。事もあろうに、私はその青年に感銘を受け始めていたのだった。奴は人生を深く全うしようと勉学に勤しんでいる、対して俺はどうだろう。毎日酒に明け暮れ、なんと無味乾燥な人生を送っていたのだろう。もしここを出られたなら、何か有意義なことをしよう。何か誇れる偉業を為そう。結局は外の空気を吸うことなく、また数日が経って私はもはや飛ぶ力もなく力尽きる寸前であった。だが、後悔の念も悔恨の念もなく、むしろ重大な示唆を与えてくれた青年に感謝こそして私は死ねた。そして今私は現世にて大学院に通っている。前世での一つの小さな命に笑われぬよう、勉学に励み、懸命に生きたいと思っている。
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無題
なんか泣けた。
下図 2010/07/19(Mon)01:17:43 Edit Top
無題
>下図さんへ

こんばんわ~蒸し暑い夜ですね。
コメント、ありがとうございます。
そう言って貰えると素直にうれしいです。
NONAME 2010/07/19(Mon)02:40:36 Edit Top
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