尋ね人と阿鼻叫喚。

最近よく道を尋ねられる。
たいして別に詳しくもない場所でも尋ねられる。

先日、犬の散歩から戻った与助と我が愛犬を待ち構えていたのはエレベータの中で威風堂々と天井に張り付いていた蝉だった。
我が家は9階。階段で上がるにはかなり体力が消耗する上、汗だくになるのでここはエレベーターを使いたい。
どうにか追い出せないものかと音を立てたり、揺らしたりして（良い子は真似しないでね！警報が鳴るかもしれないよ！）色々試行錯誤してみるが、蝉は断固としてそこから動く事はなかった。
その毅然とした態度には忌々しさを覚えますね。しかしこうまで蝉が不退転の決意を持ってすると言うならば、逆に大丈夫なのでは。
まさか与助が乗って扉が閉鎖された瞬間にこの密室の中で飛び回るだなんて、そんな、そんないと恐ろしい行為をする筈がない。してくれる筈がないじゃないですか。
などと言う希望的観測が仇となったか。でもね、こうなる事が分かっていたのに敢えてそこに踏み込んだ自分の度胸を自分で讃えるべきだと思ったんだ。

なにはともあれ密室の中で阿鼻叫喚が木霊する。