与助はボーリングが苦手である。というより、ボーリング自体あまりやらないので、あの重いボールの投げ方や、放つタイミングなどに戸惑ってしまうのだ。
そんな私が何故ボーリング場へと足を運んでしまったのか。それはバイト先の先輩が今度結婚するからそのお祝いとして、与助も参加してほしいとのことで、
当初、その結婚の吉報を聞いた時は、単にして心からの祝福だったが、話が続き、皆でボーリング場に行くと聞いてからは、逆に罵りたくなった。
罵詈雑言を未来の新郎に浴びせたくなったのだ。しかし、彼にも、そしてその彼女にも、仕事で色々と世話になってる身。
人間、恩のある人物には弱いもの。つい、了承してまった。
それからというもの、そのボーリングがある日にちまでの日々、鬱でならなかった。
それほどまでに与助はボーリングを嫌い、ボーリングを疎み、そしてボーリングを憎んでさえいた。
だってアナタ、連続的にガータ出す光景を他人に見せられますかって話ですよ。
そしてやってきた当日、集まったのは八人ほど。
幸いな事に婦女子の方々はおられないようで、少し安心。
ボーリング場には二台の車で向かうようで、私は運転事故常習犯の車に乗せられることになった。この常習犯、急にスピードあげたり、対向車にぶつかりそうになったりで、散々なものでそれをけらけらと笑って済ましている。まぁ、与助は足で車のハンドルを操作する男の車に乗り慣れていた事もあってか割と平静だったのだが、後部座席の二人は終始震えていた。
「与助さん、よく助手席乗ってられますね!?」
私もタフになったものだ。
有難くなんてないんだよ、忠太郎。
そして予想は現実に。
ROUND1に着いて、ボーリングを始めるや否や、初っ端からガーターを出す与助に一同沈黙。
こういう時こそ笑って済ましてほしかったよ常習犯貴様…!
チーム戦で、負けた方が勝ったチームにジュースを奢るという罰ゲーム付きのボーリングが始まって一時間。
完全にジョーカー扱いされている与助の隣にはこの八人の中で最も高いスコアを叩きだす後輩君。
憎たらしいぜ!イケメンだし!
そんな彼からボーリングに関してのテクニックを伝授される。
なんとスコアが50台から80代まで伸びる伸びる!
「すごい!マンガみたいな展開ですよ!この調子で100超えましょう!」
後輩君からのお褒めの言葉で調子に乗る与助ちゃん。
調子に乗ったら乗ったでボールはすぐにガーターへと直送される訳で、「与助さんは褒めずに貶していった方がいいんすね!」なんて言われてお前ちょっと先輩なめんなよ!
結局スコアは100にも届かず80以下へと縮んだ。
手渡された与助のスコア表を最高記録で破り捨てた。
その後皆で仲よくラーメン食べて帰った。
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