Dodoria.blogはクリエイター職を目指す義光、忠太郎、与助の3人が
互いを切磋琢磨しながら実力向上を図り、仕上がった作品を記録として残すために設けられたブログである。
category:よしみつ短編集
原稿用紙5枚くらいの小説はShortShort、略してSSと呼ばれています。
たぶんテストに出ます。
たぶんテストに出ます。
『似て非なるもの』
「いつもの、発注しておいたよ」
姉はそう言うと、残りのトーストを口へ運び込んだ。わたしは頷いて礼を言い、またニュース番組に目を移した。報道内容ではなく時間確認だった。画面の左上には7:12と表示されている。あと一時間もすれば、N中学校へ登校する時間になる。
「いつものはいつ来るの?」
「一週間後だね。そこの、取って」
姉に牛乳瓶を差し出す。
一気に飲み始めた。
わたしと姉はよく似ている。双子だから当然なんだけど、他人からすればどちらか分からない時があるという。よく観察すればわかると思うんだけどな、牛乳をイッキする姉を見ていてそう思う。男子みたいなのが姉だ。姉は空になった瓶を机に叩きつけ、勢い良く立ち上がった。
「よし、風呂だ」
「たまには片付け手伝ってよー」
その言葉を背中で受け止め、姉はお風呂場の方へ跳ねていった。
わたしはお皿を重ね、キッチンの洗い場に置いた。スポンジに洗剤をつけて、丁寧に洗っていく。
いつもの、というのは化粧品のことだ。わたし達は洗顔剤や歯磨き粉といったものをお店では買わない。日本のサイトから、海外で人気の商品を取り寄せていた。すこし前、チャレンジ精神あふれる姉が試しに買ってから、わたしも母も影響を受け、今ではそれを使うのが習慣になった。国産のものより安いし、わたし達の肌に合う。難点を挙げるとすれば、読めないことだろうか。英字で書かれているから。
皿洗いを済ませて、わたしは歯を磨くため洗面台へ向かった。
英字で書かれた歯磨き粉を取る。洗顔剤とメーカーが同じのもので、あまり歯磨き粉の味がしないし、口の中で溶けるように広がる。わたしは気に入っていた。それを歯ブラシに載せると、調子はずれな鼻歌が聞こえてきた。となりのお風呂場からだ。
「早く上がってよう」
「もうすぐ上がるよう」
思わずため息がでた。姉の『もうすぐ+動詞の完了形』はおよそ10分の延長を意味する。わたしは歯ブラシを口に突っ込み、前歯から奥の歯へ小刻みに動かしていく。そのとき、なにか口の中で違和感を感じた。強烈な海の香りが、舌を通して鼻腔へと突き抜ける。触感は歯磨き粉と同じだけれど、まったく広がらない溶け心地、あきらかにいつも使っている歯磨き粉とは違うものだった。急いで吐き出し、コップで口をゆすぐ。
姉がお風呂場から出てきた。
「あがったよう」
その手には英字で書かれたチューブが握られている。
姉は体にタオルを巻きながら、それを洗面台の隅っこに戻した。わたしはそのチューブを掴み、さっき吐いたチューブと見比べた。何が書いてあるかはわからないが、中身の減りが異なる気がした。
「あ」
そうか。
姉が洗顔剤と間違えて使ったんだ、歯磨き粉を。
あーきもちよかったと一人ごちて、姉はリビングへ向かおうとする。気づかなかったらしい。言おうかと迷ったが、しかし、新たな問題が生じていることに気づいた。わたしは二つあるチューブを見比べる。
それは英字で書かれてあって、読むことができない。
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