ひとり暮らしな考える日々

　ちゅんちゅんちゅん、鳥のさえずりが聞こえてくる。
わぁ、わぁ、子供達の楽しげな声が聞こえてくる。

久しぶりに朝起きた。大きく伸びをすると全身に血が巡るこの感じ。久しぶりだ。朝起きるのってやっぱりいい。何がいいって、気持ちいい。やっぱり自律神経が安定していると頭の冴えも一味違う。といっても元が悪いのでそこまで変わらんか。orz と自虐的に回想しつつ、コーヒー、煙草、そしてケロッグのコーンフレーク。コーンフレークはやっぱ牛乳少なめに限るよね。

 このシャリシャリ感がまたたまんねぇってなわけで。そういえば、ラーメンもそうだけど、注文するときはいつも「バリカタ（すごく固い麺）」を頼む。カップラーメンもそうだ、３分待たない。30秒くらいで無理やりバリバリ食べてしまう。うぅん、甘党とかあるけど「固党」ってないなぁ。固党。ｗ　流行語大賞には載らなさそうだ。語呂が悪いｗ

とかしょうもないことを考えつつ、やっぱり最後はズズズのスー、パー。たばことコーヒーの黄金の組み合わせ。そういえば、煙草吸ってるときに食べたり、飲んだりするのって体に悪いらしいね。口の中にひっついたニコチンをそのまま肺だけじゃなくて、胃にも流し込むので健康に悪影響なんだって。言えた義理じゃないし、辞めるつもりもないけどねｗ

と、そんなこんなしている内にインターホンが鳴る。きたきた。ドアを開けると、小さな女の子が申し訳なさそうな、泣きそうな顔をして立っている。150センチの超ミニマムサイズ。この外見で高校三年生、現在、美大の試験に向けて励んでいる女の子。まぁ一言で済ませるなら、一応、…彼女だ。よく人から犯罪だと揶揄されるが、いたしかたがない。身長差は約20センチ。そう思われてもこちとら弁解のしようもないわけで。orz

「あー汚い。ゴミちゃんと出さないと」
「はいはい、すまんね」

彼女はやはり自分の方がしっかりしているというポジションを確保したいという、負けず嫌いなところがあるらしく、いつも家に来ると一言目がこれだ。全く、背伸びもほどほどにして頂きたい。むしろ優位なポジションを確保したいなら、鞭で叩きつけてくれるぐらいのほうがこちらとしても…。いや、むしろ放置プレイのほうが…。

「何考えてるの？」
「……あへ？」

さて、今日はセンターの勉強を教えるのが自分の役目である。もうあと一週間しかない。彼女としても気合いが入っているのだろう。こちとら教えがいがあるというものである。といっても回答見ながら、採点するのが主な自分の役目である。誰でもできるっちゅうねんorz 部屋の片づけが一通り終わると、早速鞄から持ってきた勉強道具を見せてくれた。センター模試のコピーである。どれどれ…。あれ…？まっさらってどういうことだろう。

「あのね、勉強する時間あんま取れなくて」
「……」

もう知らん。ベッドに向かいパジャマに着替えて寝る準備を整える。さぁ睡眠の時間だ。頭を冴えさせておく必要もなくなったわけだし。寝よう。こころゆくまで夢の世界につかろうではないか。

「待って！ちゃんとやるつもりだったの。代わりに教えてほしいことがあるの？」
「…ほう？なんじゃらほい？」
「学ぶ楽しさを教えてほしいの」

というわけで別のことに頭の出番がどうやら回ってきたらしい。学ぶ楽しさ、か。実際、俺もそうだった。高校時代、落ちこぼれ組の一人だった俺も教師共の作りだした勉強しなきゃという脅迫概念に囚われていたあの時代。確かに、彼女の言うところもわからなくはない。というかすごくわかる。学校の教育者を非難する訳ではないが、この勉強が将来的にどういう働きをもつものなのか、教えない人が多い。

「数学とか特にそうだ。俺文系行くから関係ねぇ」とか言う学生もたくさんいるだろう。

反論するならば金融は常に数値が動き、世の中の流れを知るうえでは欠かせない分野である。それを本当に理解するには数学だってやはり必要である。

よく「じゃあ数ＡのＡ∧Ｂとか、ベクトルはどうなんだよ」っていう疑問があるが、あれも必要だ。

独自の理論を開拓する上で欠かせない、概念的なフレームワークを導き出す上では不可欠な勉強の一環なのだ。簡単に言えば論理構築のための勉強と考えて貰って差し支えないはずである。

難しいのはここからだ。勉強が有意義なのは何とか理解できるが、それを楽しむにはどうすればいいかというのは難題である。ほんまでっかＴＶを知ってる人になら簡単に説明できるのだが。もちろん、彼女は知らない。
というわけで一杯のコーヒーを用意してみた。

「ごらん、この湯気を。蠢いておるだろう。水蒸気だよ。遠くからみれば、ただの煙だが。近くで見てみるといい。そうだもっと顔を近づけて。わかるだろう。ひとつひとつの水蒸気の粒によって構成されているんだよ。この粒子の移動パターンを追いかけて、空気上にどう拡散するか、興味が湧かないかい？」
「湧かない」

orz。そりゃそうだ。

「なら、言い方を変えよう。」と、今度はコーヒーの粉だけが入ったカップを用意。
「あ、ミッフィーちゃん」
「そうだね、ミッフィーちゃんだね」

ちなみに最近注目されているミッフィーちゃんですが、あのばってん印って口じゃないのを初めて知った。あれは鼻と口で、∨が鼻で∧が口らしいです。何か急激にミッフィーちゃんが可愛くなくなった瞬間でした。完全に話がそれたが

「まぁそれは置いといて、ここにいる粉は学生達の集まりだとしよう。クラスでもいいし、学年全員でもいい。ここに冷たい水を注ぐと、湯気はたたないね。水の温度が勉強やクラブへの打ち込み度合いとする。そして湯気は社会へ独立した学生達の人数としよう」

蛇口をひねって、ちょっと熱い水をカップに注ぐと、湯気が少しだけ立ち上る。こういう時にあんまり横やりを入れてこないところは魅力的である。だって、色々ややこしいもんね。ｗ

「湯気はたったけど、これじゃあ独立した学生の人数はまだ少数だ。というわけで今度は熱いお湯を入れると、ほら、独立する人数はどんどん増えていく。皆がばらばらに散っちゃうけど独立してるよな。この後皆がどこに行くか気にならない？」
「それはちょっと気になる」

よかった。肯定の反応を頂けた。ここで気にならないなんて言われた日には、ボールペンを叩き割って、壁に頭を打ちすえた後、自虐的大妄想に耽るところであった。

「それがさっき行ってた拡散パターンってことなんだ。これを知るには例えば湯気が発生している場所は特定できるわけだから、拡散仕切る直前、つまり空気に変わる直前の粒子を探っていくんだ。これを学生に置き換えると」
「ちょっと待って。わかんない」
「ん？どのへんが？」
「全部」

全部かぁ。全部ときたかぁ。
「ごめん、もっとわかりやすく説明すると、粒子つまり学生が社会に出たところを特定するんだ。何故なら、転職だとかそういうこともあるから、後になればなるほど、特定しにくいのはわかる？よかった。だからさっき言った空気っていうのは社会と考えてもらうとわかりやすい。さてここから、測定するには数学的な知識がいるわけだ。例えば社会に出た学生にアンケートを取った後に集計するときだとかね。こういう高校を出たらこういう社会的役割を担いやすいだとか、水の温度の話で言うと、どれぐらい勉強すればどんな社会に出ていけるのか。そういうことを解明するには全て、数学的な知識がいるんだよ。まぁ粒子なら加えて物理学だって必要だ」

「ふんふん」
「だからさっきみたいに、皆がどういう社会に出やすいのか気になるとか知りたいと思うなら、数学を勉強するわけだ。それは自分の知りたい目的のための通過点みたいなもの。だから」
「学びたいと思いたいなら、まず自分の知りたいことを見つけるのが大事ってこと？」
「そうそう。」
「何だ、一言で終わるじゃん。何でそんなややこしい説明したの」

orz。

まぁわかっていただけただけ、ましだろうか。彼女は美大受験がメインなので、絵画以外の勉強がおろそかになるのも無理からぬことだし。口べたな自分の話を最後まで聞いてくれたわけだし。という話を色々しているともう帰る時間。駅まで見送ってやる。今日は変なところに頭を使った気がする。というかあんな薄っぺらい話でよかったのだろうか。最近、海外の数学ドラマ見ててよかった。「numb3rs」面白いよ。

帰宅すると、やはり誰もいなくて、安心する。寂しがり屋だけど、一人の時間も心地よい。さてと、小説の続きでも書こうかな。（来週、発表迫ってるけどね！ｗ）