Dodoria.blogはクリエイター職を目指す義光、忠太郎、与助の3人が
互いを切磋琢磨しながら実力向上を図り、仕上がった作品を記録として残すために設けられたブログである。
category:忠太郎
どもども、忠太です。
昨日の話をし申す。
朝起きると、ほのかに香る雨の臭いが鼻孔をくすぐった。
「…梅雨かな」
朝起きると、ほのかに香る雨の臭いが鼻孔をくすぐった。
「…梅雨かな」
湿度の高い朝の空気が頭の回転を鈍らせた。それでも空腹が考えをまとめるよりも先に
自分を勝手気ままに台所へと導いてゆく。
昨夜の洗いものがそのまま放置されている。
そうだ、飯にしよう。昨晩にたいた飯の残りを炊飯器からお椀に移し、インスタントのみそ汁の袋をあける。レンジの音がまだ眠気を訴える頭に心地よい響きを立てて、自分の朝はようやく始まる。
この日は、前からずっと楽しみにしていた日でもあった。
谷川俊太郎さんの講演会、ずっと楽しみにしていた。
「夜のミッキーマウス」だったか、初めて買った谷川さんの詩集の一節が腹が満たされると同時に、ふと頭をよぎる。
(なんでも、おまんこなんだよ)
確かこんな一節だ。
忘れられない一節、誰にも教えたくない自分だけの一節。
服を着替え、産毛のようなひげを剃る。
鏡の前にはだらしなく、まなこが半開きの男が興味なさ気にこちらをぼうっと
眺めている。
10時半、その前に学校に行かなければ。学生の本分。創作といつも面白い葛藤を見せてくれる
学生の本分。
ブルーのチェックのシャツ一枚に着替えて、長雨に打たれながら、チャリを漕いだ。
外には人もまばらで、思わず朝の六時とかそんな早朝の風景と見間違う。
自分と同じようなうつろな眼で通りを過ぐる人々。夜になると目を光らせるくせ。
僕はこの町が好きだ。
午前中のゼミに顔を出し、どこまでも答えのないブランドの議論に花を咲かせた。
コカ・コーラ社の失敗と復活の理由、引き金となったペプシのマーケ。
味もグレードアップしたのに、大衆に受け入れられなかったのは
客だと思っていた大衆に実はファンが多かったことに他ならないのではないかと、
ない頭で考えてみた。
古きものを変化させるのは一苦労だ。
谷川さんはそんな変化に臆しない。飽きたらそれまでのスタイルをかなぐり捨てて、
新しいモデルを構築する。
むしろ変化し続けることが彼のシステムなのかもしれない。
そんな彼のシステムに惚れた男がここにいる。
昼食はラフにコンビニのサンド。新調したパソコンでごった返した研究室の空いている隙を
見つけて、昼食ありつけた。
「今日はどっか行くの?」
研究室でよくだべるS君が声をかけてくる。湿気でぺたんこになった長い髪の間から突きだした眼鏡の奥、興味があることを知らせるように、こちらを覗きこんでくる。
いい奴なんだ。
講演会のことを話すと、後はうまい具合に質問を重ねてくれる。
しばしの歓談。
「昔は彼みたいに詩人なろ、思ってたんやでぇ」
「何でやめたん?」
「だって激戦区。入り込める気がせぇへんわ」
乾いた笑い。
「で、小説?」
「そうや」
胸を張って見せる自分に対し、呆れた表情を返されてしまった。
彼になんでもおまんこの話をするのを忘れた。
その後は急に予定が入り、彼とプロジェクトの打ち合わせに入る。
コードネーム、パプリカ。
内容は話すことはできない。こういう話は割と面白いのに、記事や日記に書くことができないのが
残念である。
午後3時半になってしまった。
会場が開くのが5時半、間に会うか。
実は一人で行くわけじゃない。友達と行く。京都でせっせと創作活動に励む努力家、Tさんの作品に皺がつかないよう、慎重に鞄に入れて、再び家を出た。
台風が近づいているのか豪雨の中、濡れた靴の気持ち悪さも忘れて、思わずにやけ顔。
いぶかしげな視線が痛い。
南海線から乗り換えて、天下茶屋で阪急乗り換え。ここの駅の構図が好きだ。
改札を抜け、エスカレーターで下に下ると連結しているように、これまた改札が続く。
実に効率的。
淡路乗り換えで河原町へ。長い道程の最中、思いに耽る。
高村光太郎の詩も好きだ。
「道程」、僕の前に道はないから始まる一節、そして僕の後ろに道ができると続く。
自分の後ろはあまり顧みたくないものだが。
どうせろくなものではない。せいぜい、原稿用紙と生ごみがつまったゴミ箱とトイレのイメージ。
ほら、ろくなものではない。
河原町通りをふらふらしていると、電話が鳴った。
藤井大丸前で待ち合わせとのこと。
大丸がどこにあるかわからない自分は宝くじ売り場のおばちゃんとしばし歓談する。
「西だよ」
おばちゃんの懇切丁寧な説明によって、ようやく辿りつく。
ラフなパーカー姿のTさんを見て、ほっと一息。こういうときはスーツが好ましいのかと
電車の中で逡巡したのだ。
講演会は徳正寺で行われると聞いた。京都で育ったSさんに早速、近くの喫茶店に連れていってもらう。新作の「ところで」という谷川さんの詩をSさんから見せてもらった。
簡潔にして、想像の余地のある読み応えのある詩だった。全部で七編。
全て、ところでの一節で終わっている。リズムがいい。
アイスカフェオレとアイスティーが空になったところで、
外へ出た。
徳正寺に入ると、小さなお寺はすでにごった返していた。
木の階段を上り、寺内に入る。
正面に大きなスペースと三つ席が講演者用に設けられていて、入って左手には詩集の販売が行われていた。席は正面に近いところは座布団で、後の方は背もたれのついた椅子が並ぶ。むろん前へ。
今回の講演はメリーゴーランドという絵本やさんを介しており、中央の席にはそこのオーナーが着いた。なんとも垢ぬけた人で講演前から観客を笑わしてくれて、これは期待できると、講演者でもないのに変な緊張感が抜けた。音楽が消え、谷川さんともう一人、入ってきた。
講演は1時間半に及び、面白い話が聞けたように思う。
講演の途中でも何度か谷川さんの詩の朗読が挟まれた。
小学校時代の詩から、高校生の頃の詩。
童心に帰ったように朗読する谷川さんの詩を聞いていると、安らいだ。
雨の音とちょうどよく合っていたように思う。
空白の十年の話も興味深かった。
詩を書くのに疲れ、嫁に捨てられ、できた空白の十年間。
彼ほど長期に渡って、詩人として活躍した人はいないと思い込んでいた自分にとって
それは衝撃だった。
やはりどんな人間にも「空白」は付き物なのだろうか。
特に印象深かったのは最後の朗読だった。
「なんでもおまんこ」
谷川さんは何故か朗読の役をオーナーにまわして、結果、オーナーが読むことになった。
個人的には少しいそぎすぎている読み方のように感じられた。
なんでも、おまんこはその文字通り、色んな事が気持ち良い詩なのだ。
その気持ちよさは急かしたものではなく、ゆったりしたものだから。
だけどやっぱり最後にこれを読んでもらえるとは思わなくて、嬉しかった。
講演後にはTさんと晩飯を食べ、喫茶店で今日のことで盛り上がった。
そして、終電前に帰路へ。
充実した一日、だったように思う。
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無題
>70年代少年さんへ
お返事遅くなりました。
記事読んで頂きありがとうございました。
小説をお書きになるということで
私としても読ませて頂けるなら光栄です。
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長々と失礼いたしました。
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