Dodoria.blogはクリエイター職を目指す義光、忠太郎、与助の3人が
互いを切磋琢磨しながら実力向上を図り、仕上がった作品を記録として残すために設けられたブログである。
category:忠太の「創」
すっかり秋になりました。
ずいぶん、お久しぶりに書きます。
この間、エッセイを書いたのでこちらに載っけます。
よかったら読んでやって。
街にはルーツが溢れてる。それぞれのルーツが往来し、響くんだ。引きずるような音、行進のような規則正しい音かと思えば、踊るような激しい音、本当に様々な音が入り乱れてる。そういう音の中にいると、小学校の頃に履いていた運動靴がふと懐かしくなる。靴底が皮べらみたいで、薄くてまるで裸足で走っているみたいだった。雨の日も風の日も、駆け回ったあの日々。いつの間にか、ゴミ箱には泥んこだらけの運動靴がうず高く積まれていてしまってさ。人知れず、靴の裏の乾いた泥んこが剥がれて床に散らばるってゆく。悲しそうに散らばってゆくんだ。昔の思い出が忘れられてゆくみたいにさ。代わりにまっさらな元気いっぱいのスニーカー達が駆け回るようになった。某ブランドのスニーカーが学校中の靴箱に集まった。まるでショーケースに並べられたみたいにさ。僕もその一人で生意気にもナイキのを親にせがって買ってもらったんだっけ。幼いながらも新しい時代を感じた。つま先で切る風が心地よかった。体育館や舗装されたグラウンドで大威張り。でも雨のにおいのする土の上や水溜りを避けるようになった。だって靴が汚れてしまうからだってさ。今考えると少し笑けてしまう。じゃあ何で新しい靴を買ったの?当時の僕ならこう答えるだろう。だって皆が履いてるんだもん。
ある日、近くの池が干上がった。綺麗な真水と入れ替えるために一時的に水を抜いていたらしいんだけど、僕らはそんなことお構いなしに入っていったんだ。するとずぶずぶってさ。沼になってたんだね。叫び声をあげた時にはもう遅かった。べったりと分厚い泥が離れない。まっさらな24CMのスニーカーはこげ茶色の26CMくらいの下足になってしまったってわけだ。もうどうでもよくなってそのまんま泥の中で遊んだが、最後。家に帰ると憤怒の母が待っていた。洗っても泥が取れなくて、その日からビンテージのスニーカーはただの運動靴になってしまった。その代わり、変な話だけど自由を手に入れた気がしたんだ。だってどこでも走れるようになったんだ。人の目なんか気にせずに、どこまでもいつまでも、日が暮れて、近くの蝙蝠とだって駆けっこした。
でもいつの間にか、成長していたんだよね。靴のサイズが合わなくなっちゃったんだ。つま先を折り曲げてまで履いてたんだけどね。夜中に足の指がきりきり痛んでようやく観念したよ。でも僕だけじゃなかったみたいだ。今度はなんだかわからない動物の皮や絵の具で描いたようなカラフルなスニーカーが流行り始めた。女の子の靴は足の裏の変なつっかけをどんどん高くしてゆくみたいだった。何だか人って面白いよね。でもこの頃に僕は出会ったんだよ。ある靴に出会ったんだよ。
その当時、毎日のように店頭のお店の人と話した。毎日通ったような気がする。それも買いもしないのにさ。イタリアのカワイスキーっていうブランドのロングブーツに憧れて、ドイツのベロニカっていうブランドのシーブーツのためにお金を貯めた。周りではスニーカーじゃあやっぱりナイキで、外国物だとヨーロッパのものが多かったなぁ。柔らかくて馴染むとちょうどいいくらいの皴がつくんだよね。それがまたいいんだって。やっぱり面白いよね。だって人は歳とってしわくちゃになるのを嫌がるのに、自分の靴がしわくちゃになるのはいいだなんてやっぱり面白い。スニーカーじゃあそんなこともないんだろうけど。でもスニーカーに凝っている人って案外何足も持ってない? あれも面白いんだよ。その日に着る服に合わせるんだって。だからとにかくたくさんの色とりどりのスニーカーを揃えておくんだってさ。真っ白なスニーカー一足あれば事足りるのにね。僕はその頃、お金もなかったから頑張ってさっきのシーブーツを買おうとしたんだけどね。でもある日、店先に立つとなかった。店の人が出てきて「ごめん、売っちゃった」だって。嬉しそうに言われても僕は困る。それで、店内を見渡してある変な靴を見つけた。その靴をみたとき、何故かカブトムシを思い出した。でも何だかよくわからない靴。どこの国のかもわからないし、もしかしたらアフリカの方で日焼けしてきたのかもしれないけれど、何製かもわからないけれど、これ、いいんだよ。自分のルーツってさ、もしかするとこんな感じなのかなってずっと履いている内に思ってきて、靴の代わりに服をたくさん買うようになった。カブトムシ色の靴だから合う服もぼろぼろの旅人のような服しか似合わない。そのうち、友達は僕のこと、「浮浪者」だなんて呼び始めたけどね。でもそれが何故か心にぴったり収まったんだ。ああ、これが僕のルーツなのかもしれないなって。今でもその靴を毎日履いて、どこにだって走っていける。くたくたの靴が大切なことを思い出せてくれたんだ。
わかるかい?自由だよ。
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