瀬戸内海ですか。
いいんじゃないですかね。この時期芸術祭なるものをやっていると聞きますし。
ただその前に、言わせて貰うとするならばね?
鳥取記事を終わらせろよと。
長い長い上り坂を登り切って、漸く懐かしの鳥取砂丘へと帰ってきた三人。
へたばりながらも観光所案内まで電動自転車を返しに行き、そのまま、屍にでもなったかのような足取りで我らが民宿へと戻った。
そんな我々を迎えてくれたのが、食堂のテーブルの上に並べられた、涎をそそるようなご馳走だ。瞬く間に我々は皿の上に載せられた魚をかぶりつき、山のように盛られたご飯を飲み込むように喉へと流しこんだ。みるみると三人の目に輝きを取り戻しつつあった。屍人が生気を帯びるようであった。
ガツガツと喰らいついていると、テレビのニュースから今日の深夜一時ごろに鳥取砂丘の上空にて流星群が通る事を知った。
鳥取産の梨を頬張りながら「§Щ£€仝♪♂ξ!!」と解読不能な羅列を喚き上げた一同はその時が来るまで二階に上がって、各々の作品を描く事に。
そもそも今回の旅行は気分転換と言うか、恒常的に続く作品作りに何か刺激を加えたいと言う忠太郎殿の発案から生まれた企画だったのだ。
そうすることで作品に対していつもと違った感性で描く事が出来るんじゃないか。等と言う忠太郎殿の考えは、空理空論かつ世迷い言にも似た戯言であるのは承知していたものの、その忠太郎殿の発言に我々は妙な幻想を抱き賛同したのもまた事実であった。
そんな我々が恋い焦がれた環境は、本人達のやる気次第でいとも簡単に瓦解した。
三人が三人、十分経たずに畳へと横たわっていたのだ。なんとか踏ん張ってテーブルの上で身体を持たれさせるも、ペンを握る活力さえ失われていた。
忠太郎殿に至っては寝ていた。義光さんに至っては女の子と電話していた。私に至っては…はて、私は何をしていただろうか?
記憶にない。
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