最近、バイト先での呼称がさん付からくん付けに変わりました。
これは親しみを込めた呼び方なのか、それとも単に評価が下がっただけなのか、その辺の葛藤が頭の中をぐるぐる回っております。
与助でございます。
…………。
そうそう、忘年会行ってきたんですけどね。小、中学ん頃のサッカー部だったメンツとね。
同窓会とも言うけどね。でもそれ10月にやったばかりなんですけどね。なので忘年会でいいんじゃないかしらん。
それで。
なんと小学校の頃のサッカー部の顧問だった先生が、恩師が!来てくれはったんですよ!
いやー!これはたまらんのですね!
先生と十年ぶりのご対面をした時、懐かしい記憶が沸々と蘇ります…。
先生は相変わらず鼻の下にちょび髭を蓄えておられました。ただ違うのはそれが白髪だった事です。
小学校の卒業、あれから十年ですか。先生と会うまではそれはまだ昨日のように感じていたのですが、その白く染まった髪と髭を見た瞬間、永遠とも言えるような長い年月が経っていたように思えます。
いつかの夏の日、先生から聞かされた言葉が脳裏に浮かびました。
蝉の死骸を手で拾いながら先生は言いました。
「蝉は羽化してから一週間も経たずにすぐに死んでしまうねん。羽化する前は何年も土ん中で暮らすんやけどな、外に出たらあっという間や。儚いやろ。」
「先生、俺虫嫌いや。」
「…………。」
……先生、あの時言った言葉の意味…今なら分かります…。俺に、蝉の分まで頑張って生きろって言いたかったんですよね。蝉が頑張って生きた分、俺も頑張って生きなきゃなんないすもんね。
なんかすいません…っていうかスンマセンなんか…あん時の俺がなんかスンマセン…。なんかホントスンマセン…。
与助は涙ぐんでお久しぶりですと言うと先生は笑顔で返してくれた。
「おぉ~与助か、お前…もう三十分経っとるぞ!飲め!遅れた分挽回しろ!」
あ…あれぇ…先生、俺今すっごい感動の再会っていうのしたかったんですけど、って先生顔赤っ!まだ始ってからそんな経ってませんで!?
周りの連中はすっかりべろんべろんで、前はこういう事はなかったんだけども、これは一体どういう事なのか。
実は忘年会は夜の八時からだったんですけど、待ちきれないらしくてもう家で一人で飲んでいたらしく、与助が一人遅れて居酒屋に着いた時には既に出来上がっておられました。
先生…私の思い出の中の貴方とはギャップがあります…。
遅れた分周りからビールを何杯も注がれ、与助はお酒は強い方ではないので程なくして酔い潰れるですが、そんなの気にせずまだまだ注がれます。その度トイレでリバースです。
先生、止めてっ、止めて下さっ、ってか誰か助けっ。こ、殺されるっ!
先生はもう教職員ではないのでもうそんなのお構いなし。
「飲め飲め、与助ちゃんはもっと飲んで!全然変わってへんやんけお前はぁ!」
十年ぶりに会って「変わってない」なんて言われると結構心に傷がつくのは私だけだろうか。
そこもお構いなしなんですね!
どうしよう。もう先生が恩師から、クソ上司に成り下がってます。
もうノリがめんどくさいんですこの人。俺の思い出が跡形もなく崩壊していきます。
でも先生は止まりません。俄然逝き進んでます。
周りの元サッカー部員たちは次々と脱落していきます。ただそこに立っていたのは自分のペースをきちんと守っている奴だけです。
先生も無論、横たわっておられました。
忘年会が終わり、与助は明日が早いので、二次会には参加しませんでした。
「またな与助!与助の字は助けを与えるの与助!がんばれよー!がんばれよー!明るく生きろー!」
先生の後ろからの声援に若干鬱陶しさを感じつつも、振り返り、手を振る。
先生の背中は以前見た時よりずっと小さかった。
あれから十年。自分は変われただろうか。皆には全然変わってないって言われるけど、自分では結構変わったつもりなんですけどね。
何処がどう変わったか、なんて事を問われると言葉も詰まるもんなんですけど、まぁでも、十年。
小学校卒業してから十年俺は自分の道を歩いてきてね、今ここにいます。その道が途中、途切れていたり、あやふやでおぼろげであった時もありました。
あっちへいけば、今度はこっちといった具合の人生でした。でもそういった人生を歩んできたという事が与助が変わったと言える一番の変化だと思うのです。
まぁ言わずもがなですけどねぇ。
さぁ、これからまたいろんな事があるわけで、与助は今度こそビビらず前に進んでいきますよ!
こちとら失うもん何もないわけですからね!逝きますよ与助は!
先生、また会う時までご達者で!!
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